西尾市の子供スポーツ体操トレーニングジム教室「PHYSICAL MONSTER」

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2025/09/03

練習時間が多ければ上達するはウソ? ― 自由度問題と“反復のない反復”

🏃 はじめに

「野球は1000本ノック!」「サッカーはボールを触った時間がすべて!」
「陸上は走り込みがものを言う!」

こうした“量こそ正義”の考え方は、いまだ多くのスポーツ現場で根強く残っています。
しかし、科学が示しているのはその逆。
練習量の多さ=上達ではない のです。


🔨 鍛冶屋のハンマータスク ― 同じ動きは存在しない

ロシアの生理学者ベルンシュタインは、鍛冶屋が鉄を打つ動きを詳細に計測しました。
すると驚くべきことに、同じ動きをしているように見えて、毎回違う軌道を描いていた のです。

これは「同じ動作を完璧にコピーすること」は人間には不可能であり、むしろ 揺らぎ(variability)を含んだ動作こそが自然で効率的 であることを示しています。


🧩 自由度問題とは?

人間の身体は無数の関節・筋肉・神経から成り立ち、理論上はほぼ無限の動作パターンを生み出せます。
この複雑さを「どうやって一つの動きにまとめているのか?」という疑問を 自由度問題(Bernstein’s Problem) と呼びます。

  • 野球の投球 → 肩だけでなく股関節・体幹まで無数の組み合わせ

  • サッカーのドリブル → 相手DFやピッチ状況で毎回違う動き

  • テニスのサーブ → 風やボールの回転条件で同じ再現は不可能

つまり「同じ動きを何度も繰り返させる練習」自体が、現実には成立しないのです。


🌍 エコロジカルアプローチと制約主導アプローチ(CLA)

心理学者Gibsonの エコロジカルアプローチ では、動作は環境との相互作用によって形づくられると考えます。

この考え方を発展させたのが 制約主導アプローチ(Constraint-Led Approach / CLA)

  • 個人(年齢・体格・体力)

  • 課題(ルール・道具・目標)

  • 環境(天候・相手・スペース)

これらの 制約を操作することで、選手自身が多様な動きを自己組織化していく という理論です。


🎲 ディファレンシャルラーニング(DL) ― 反復のない反復

CLAとよく並んで語られるのが ディファレンシャルラーニング(Differential Learning)
こちらは「揺らぎを意図的に増やす」アプローチです。

  • 野球 → 足幅を変える、体をひねって投げる、ジャンプして投げる

  • サッカー → 逆足・ジャンプシュート・わざと不安定な姿勢から打つ

  • 陸上短距離 → 坂道・砂場・追いかけ競争など多様なスタート

同じ結果を得るために、あえて毎回違う動きを経験させる。これが「反復のない反復」です。


💡 筋活動の多様性が成功を生む

多様性の重要性は、実際の研究でも証明されています。

  • バスケットボールのフリースロー
    成功率の高い選手ほど、肩や肘、手首の 筋活動に多様性 が見られ、毎回微妙に異なる調整をしていることが分かっています。

  • デッドリフトやスクワットで腰痛にならない人
    脊柱起立筋の筋活動を調べると、一定のパターンに固定されず、多様な発火パターン を持っていることが報告されています。
    👉 特定の部位に負担が集中せず、ケガ予防につながる。

つまり「動作のコピー」ではなく「動作のバリエーション」が、成功と安全を保証しているのです。


👪 保護者の方へ

「たくさん練習させれば上達する」と思いがちですが、
実際には 多様な動きの中から自分なりの解決策を見つけること が大切です。

お子さまに必要なのは「やらされる反復」ではなく、環境や課題から自然に導かれる多様な練習です。


✅ まとめ

  • 鍛冶屋のハンマータスク → 同じ動きは存在せず、揺らぎが自然

  • 自由度問題 → 人体は複雑すぎて単純なコピー練習では適応できない

  • エコロジカルアプローチ → 環境との相互作用が動作を規定

  • CLA → 制約を操作して自己組織化を促す

  • ディファレンシャルラーニング → 反復のない反復で多様性を引き出す

  • 筋活動の研究 → 成功する選手やケガをしない選手ほど、多様性を持っている

👉 結論:練習時間の多さではなく、多様な解決方法を身につけることが上達の鍵

PHYSICAL MONSTER ACADEMY では、科学に基づいた「非線形学習×多様性のある練習」で、子どもたちの成長と安全を全力でサポートしています。

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