トレーニングにおける減速局面をスクワットから考える ― パワーを最大化するための視点 ―
「重いスクワットをやればジャンプ力は伸びる」
「軽く速く動けばパワーは高まる」
本当にそうでしょうか?
実は、ウエイトトレーニングの挙上動作には“減速局面”が生じます。
この減速局面の存在を理解することが、パワートレーニングを考えるうえで重要になります。
■ 減速局面とは何か?
スクワットの挙上動作は、大きく分けると
前半:加速局面
後半:減速局面
に分かれます。
バーを上に押し上げ続けると、最終的にはロックアウトで止める必要があります。
そのため挙上終盤では、意図的にブレーキをかける時間が必ず発生します。
つまり、
ウエイトトレーニングでは構造上、最後まで加速し続けることはできません。
■ 強度によって減速割合は変化する
Kubo(2018)の報告では、
減速局面は挙上局面全体の
約22〜52% を占めるとされています。
さらに、
・軽い負荷ほど減速割合は大きくなる
・重い負荷では減速割合は小さくなる
という傾向が示されています。
一般的にパワー向上のためには、
「軽い負荷を速く動かす」
ことが推奨されます。
しかし、軽負荷では減速局面が長くなりやすく、
結果として
力を発揮している時間(力積)が小さくなる可能性
があります。
■ なぜ問題になるのか?
スポーツ動作では、
・ジャンプ
・スプリント
・投球
・打撃
・キック
いずれも
最後まで力を出し切る能力
が重要です。
減速局面が大きいと、
・力を出している時間が短くなる
・力積が十分に確保されない
可能性があります。
その結果、パワー向上刺激が最適化されないケースも考えられます。
■ 減速の影響を小さくする戦略
① ジャンプトレーニング(CMJ・SJなど)
ジャンプ動作では身体が空中へ離れるため、
ロックアウトで止める必要がありません。
そのため、終盤まで加速し続けることが可能です。
これはパワー発揮時間を確保するという点で有効です。
② オリンピックリフティング
クリーンやスナッチでは、バーを止めるのではなく身体が下に入ります。
そのため、挙上終盤で強く減速させる必要性が少ないという特徴があります。
爆発的パワー向上に適した方法の一つです。
③ 可変抵抗トレーニング(VRE)
バンドやチェーンを用いることで、
下部では軽く
上部では負荷が増します。
これにより、挙上終盤でもブレーキをかけずに
力を出し続けやすくなります。
■ まとめ
スクワットは非常に有効な種目です。
しかし、
・どの局面で
・どのくらい力を発揮しているのか
を理解せずに、
「軽く速く動けば良い」
と考えるのは十分とは言えません。
パワーに焦点を当てる場合、軽負荷高速動作は有効な手段の一つです。
しかし減速局面が大きくなり、力積が十分に確保できない可能性も考慮する必要があります。
だからこそフィジカルモンスターアカデミーでは、
単一の負荷条件に偏ることなく、
さまざまな負荷特性のトレーニングを組み合わせ、総合的にパワー発揮能力を高めていきます。
筋力トレーニング、ジャンプ、オリンピックリフティング、可変抵抗トレーニングなどを構造的に配置し、
筋力、速度、力積を段階的に積み上げ、
最終的に競技動作へ転移する力発揮まで設計する。
それが、
私たちのトレーニング哲学です。

